日本酸素ホールディングスグループの日本産業ガス事業会社である大陽日酸株式会社(本社: 東京都品川区、代表取締役社長:永田 研二、以下、大陽日酸)は、水素(H2)ガスを燃料にすることで燃料由来の温室効果ガスを排出しない、半導体分野向け排ガス処理装置の販売を本年4月より開始しました。今後も世界的なカーボンニュートラルに対する取り組みなど、時代に合わせた最適な排ガス処理装置を開発・販売してまいります。
ニュースリリースPDFはこちら
「Blisters Burner H2」の外観
1. 開発の背景
日本のエネルギー基本計画においては、脱炭素化された電力による電化、または電化が困難なプロセスにおける水素・合成メタン・合成燃料など、脱炭素化されたエネルギーの活用が求められています。その状況の下、半導体製造工程ではSiH
4などの成膜用の特殊材料ガスは排ガス処理時に粉体を生じるため、プロセスにおける電化が困難でした。
この課題の解決に当社技術を活用しました。当社はGaN-MOCVD装置のメーカーでもあり、その付帯設備となる
燃焼式排ガス処理装置「Hercules BurnerⓇ」も上市しています。この装置は燃料がH
2ガスのみで、プロセス排気ガス中のH
2ガスを効率的に燃焼することで、NH
3ガスを無害化します。この装置の技術が「Blisters Burner H
2」に活用されています。
2. 装置の特徴と構造
当社は以前より半導体分野向け燃焼式排ガス処理装置を販売しており、今般 非化石燃料使用の製品として、H
2燃料のみを用いた
燃焼式排ガス処理装置「Blisters Burner H2」の販売を開始致しました。
本製品の装置構成としてはバーナー部、一次冷却部、二次冷却部(スクラバー部)より構成されています(図1)。半導体製造装置から排出されたガスはバーナー部へ導入され、加熱分解されます。バーナー内部は部材の腐食防止及び二次生成物である粉体の付着を防止するための、冷却空気を供給しており、連続稼働に対する装置安定性を高めています。
一次冷却部では高温状態の処理ガスを急速冷却し、スクラバー部にてガスの最終冷却及び処理ガス二次生成物のHF、HCl等の水溶性ガスを洗浄除去します。
図1. 水素燃焼式排ガス処理装置 概略図
本装置は水素火炎を処理ガスに効果的に接触・混合させることでH
2ガス燃焼の持つポテンシャルを引き出し、H
2リッチな排ガス以外でも排ガス処理対応可能なバーナー部構造を実現しました。評価結果として、従来の化石燃料を用いた燃焼処理と比較して、PFC※除害において30~50%のエネルギー削減が可能となりました。
また、従来の化石燃料を用いた既存製品「Blisters Burner
Ⓡ」から、軽微な変更でH2燃料仕様に変更することができる構造としたことも特徴であり、将来的なH
2燃料需要の増加を見込んだ設計となっております。
「Blisters Burner H
2」は、当社が「Hercules Burner
Ⓡ」にて培ったH2燃料のみを用いた排ガス処理装置の豊富な販売実績やノウハウが詰まった製品であり、来るべき水素社会においてカーボンニュートラルを実現するうえで有用な選択肢となりうる製品です。
※PFC:炭素とフッ素が結合した化合物
本件に関するお問い合わせ
大陽日酸株式会社
広報部
TEL: 03-5788-8015