日本酸素ホールディングスグループの日本産業ガス事業会社である大陽日酸株式会社(本社:東京都品川区、代表取締役社長:永田 研二、以下、当社)は、電気炉製鋼プロセスで使用する高効率カーボンインジェクター「TSCi」の販売を開始しました。TSCiはお客様の吹き込みカーボン量や使用電力量などを削減でき、お客様のCO
2排出量の削減に貢献します。
ニュースリリースのPDFは
こちら
図1 TSCi外観
1.販売の経緯
電気炉製鋼プロセスにおいてカーボンインジェクターは溶鋼成分を調整する目的で多くの電気炉で使用されています。従来は、炉前からのパイプによる溶鋼直接吹込み方式でしたが、近年では、オペレータの安全性および作業負荷低減の観点から、炉壁吹込み方式が採用されているものの、集塵ロスや炭素利用効率の低下が課題となっています。当社では、これらの課題を解決すべく、Tallman Technologies Inc.(カナダ)製の高効率カーボンインジェクター「TSCi」の販売を開始しました。
2.技術の概要
電気炉製鋼プロセスで使用されるカーボンは、炉壁に設置された単孔ノズルを有するランスパイプにより電気炉内に吹き込まれます。しかしカーボンは吹き出し直後に減速・拡散し、集塵ロスや炭素利用効率の低下が課題となっています。この課題に対して、TSCiはカーボンを搬送するノズル(トランスポート)と、速度減衰を抑制する環状ノズル(シュラウド)の2種の空気吹き出し口により、初速マッハ2で吹き出したカーボンの減速・拡散を抑制し、高効率な溶鋼への吹き込みを実現します。本技術は国内で使用される比較的粒径の大きいCDQコークスだけでなく、今後CNの観点から広く利用が見込まれるバイオコークスに対しても高い吹き込み能力を発揮します。
TSCiは米国をはじめ海外に多くの納入実績があります。日本国内ではCDQコークスを多く用いる電気炉ユーザにご使用いただくため、課題となる機器の摩耗対策を実施し、その有効性を確認いたしました。
図2 噴流状況模式図[左:単孔ランスパイプ 右:TSCi]
3.導入の効果
カーボン源として無煙炭および石油由来コークスを使用した操業においては、炉壁からの吹き込みカーボンの20%削減、原料スクラップと共に投入するチャージカーボン32%の削減が確認されました。同ユーザにおいてはその後の操業最適化により、チャージカーボンは従来値と比較して最大85%まで削減しました。また高いカーボン吹込み能力によりスラグ形成速度が向上し電力原単位3%削減、スラグ中の酸化鉄割合3%削減が確認されました。
カーボン源として国内で一般的なCDQコークスおよび破砕石炭を用いた操業においても、吹き込みカーボンの20%以上の削減を確認しました。
当社では、CN社会の実現に向けて、当社の環境貢献製商品によるお客様のCO2排出量削減に取り組んでおります。今後もオープンイノベーションによる新たな技術を組み合わせることで、お客様のCN達成に向けて貢献します。
本件に関するお問い合わせ
大陽日酸株式会社
広報部
TEL: 03-5788-8015
製品に関するお問い合わせ
工業ガスユニット
ガス事業部 営業開発部
TEL:03-5788-8305