大陽日酸技報 No.43(2024)

技術報告

極低温下で操作可能な高性能酸素分離膜の開発
Development of Membrane with High Oxygen Separation Performance under Extremely low Temperature

 産業と技術革新の基盤をつくろう

酸素は様々な産業に必要なガスでありその需要は年々高まっている。酸素の深冷蒸留が発明されて久しいが,今もなお高純度・大容量の酸素製造方法の主流である。しかし,深冷蒸留による酸素製造は,相対揮発度が小さい酸素/アルゴン系の分離に蒸留塔構成の多くを費やし装置が大型化する課題があり,蒸留と新たな単位操作とのプロセス統合が期待されていた。膜分離は気液平衡の制約を受けず製品の連続的な濃縮が可能で,低温に伴う流体の高密度化による装置の小型化の点から有望な単位操作と考えられる。しかし,既往の膜分離技術は極低温下に関する研究例が極めて希少であった。本報では,精密な細孔径制御が可能なオルガノシリカ系bis(triethoxysilyl)methane (BTESM)膜で低温下でのガス透過特性を評価した。結果,-115℃の混合ガス実験で酸素/アルゴンおよび酸素/窒素はそれぞれ12.7,11.8と非常に優れた選択性に加え,既往研究と比較して高い透過性を示すことが判明した。
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関連技術報告:大陽日酸における空気分離装置の開発の歴史

銅ナノ粒子を用いた転写型接合シートの開発
Development of Transfer Bonding Sheet Using Copper Nanoparticles

  産業と技術革新の基盤をつくろう

パワーデバイスは,電気自動車などの用途でインバーター等の電力変換器に用いられており,最近では高温動作が可能なSiCパワーデバイスが期待されている。一方,従来のSiパワーデバイスで使用されているはんだ接合材は,耐熱性に乏しく,SiCパワーデバイスには不向きで,耐熱性の高い金属ナノ粒子接合材が注目されている。本稿では,当社で製造した銅ナノ粒子を用いて,低温接合(250℃以下)可能な転写型接合シートの開発を実施したので報告する。具体的には,バインダーのガラス転移温度および濃度を検討した結果,250℃の接合温度で,70MPa以上のせん断強度を安定して得られる転写型接合シートを作製できた。
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関連サイト:ニュースリリース「酸素燃焼による画期的な金属ナノ粒子合成技術を開発」

技術紹介

超高純度酸素およびアルゴンを併産する窒素製造プロセス
Nitrogen Generation Process for Co-production of Small Amounts of Ultra High Purity Oxygen and Argon

 産業と技術革新の基盤をつくろう

半導体工場向けのガス供給では,これまでは窒素ガスをオンサイト窒素製造装置で生産し,少量の酸素やアルゴンを他工場からローリー車で液供給する組合せで対応してきたが,近年大型のものが多く,酸素やアルゴンについてもオンサイトでの生産が求められる傾向にある。この要求を満たすため,少量の超高純度酸素および超高純度酸素とアルゴンを効率的に安定して供給可能な窒素製造プロセスを開発した。本報では,開発したプロセスの概要と,大型装置向けに求められる操業範囲および操業変更への対応について紹介する。
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関連技術報告:MG10600D型窒素製造装置

DS-TIGアドバンストーチのプレハブ配管溶接における実用化
Practical application of DS-TIG Advanced Torch for High efficient prefabricated piping construction

  産業と技術革新の基盤をつくろう

当社商材であるサンアーク®DS-TIGアドバンストーチを社内製作構造物に適用したので,効果等を紹介する。本トーチを用いることで,汎用ティグ溶接機でも安定した深い溶込みの溶接が可能となる。実用化により下記3点の効果を得た。
 ・溶接関連作業時間65%短縮:開先加工レス,溶接パス数削減,溶接速度向上
 ・溶接品質の均一化:自動溶接
 ・開先加工費,溶着金属量の削減:エコ溶接
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関連技術報告:キーホール溶接向け「サンアーク®DS-TIGアドバンス溶接トーチ」

MOCVD装置向け高温原料供給ユニットによるAlScN成膜の実証
Demonstration of AlScN growth using a high-temperature precursor supply unit for MOCVD equipment

MOCVD(有機金属化学気相成長)法により成膜された窒化物半導体は,その優れた物理的特性により,高周波・高出力デバイス,LED,レーザーなど広く応用されている。近年,窒化物半導体の成長時に,Sc等の希土類元素を添加すると,従来にはない有用な特性が発現することが明らかになっている。特にScとAlの混晶であるAlScNについては,不揮発メモリの低消費電力化や高電子移動度トランジスタ(HEMT)のキャリア密度向上に寄与することが期待されている。本紙では,低蒸気圧であるために原料としての使用が困難であったCp3Scを,当社で開発した高温原料供給ユニットを用いることにより安定供給に成功し, AlScN成膜を実証したので報告する。
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関連技術報告:MOCVD装置向け低蒸気圧原料供給ユニット(LVシリーズ)
関連技術報告:深紫外発光デバイス用MOCVD装置 SR4000HT
関連サイト :大陽日酸 MOCVD装置特設サイト

分離膜を活用したアンモニア混合ガス中の水分除去技術の開発
Development of Technology for Removing Water in Ammonia Mixed Gases Using Separation Membranes

   

多量の水分を含むアンモニア混合ガスに対する新しい水分除去技術を開発した。アンモニアは近年ハーバー・ボッシュ法に代わる合成法の研究が盛んであるが,その方法によっては多量の水分を含んだアンモニアが発生すると推定される。本技術では,吸着精製に膜分離精製を組み合わせることで吸着精製部を小型化し,吸着剤再生工程に要するエネルギーとアンモニアロスを抑えた。実験により,約10000ppmの水分を含むアンモニア混合ガスから数ppm以下への水分除去が行えることを実証し,吸着剤の必要量を89%低減でき,プロセスのアンモニア収率も吸着精製単独と比べ約5%改善されることを示した。
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関連技術報告:工業用アンモニア精製技術の開発

高純度ヒドラジンガス供給システムの開発
High-Purity Hydrazine Vapor Delivery System

 産業と技術革新の基盤をつくろう

当社では半導体製造向けに高純度ヒドラジン材料としてRASIRC製BRUTE® Hydrazineを販売してきた。高純度ヒドラジンガスが新規半導体材料ガスとして注目される中,半導体量産プロセス向けにはヒドラジンガスの高濃度かつ安定的な供給が求められる。今般,当社のガスハンドリング技術を活用して,半導体量産プロセス向けのヒドラジンガス供給システムを開発したので,供給特性と併せて報告する。
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関連技術報告:無水ヒドラジンを用いた TiN ALD (原子層堆積法) プロセス

ウルトラファインバブル(UFB)発生器
Ultrafine Bubble Generating Nozzle

     
 

ファインバブルは, ここ10年くらいの間に様々な分野で利用が拡大してきており, その活用は多岐にわたっている。また, SDGsと密接に結びついており, 今後も様々な分野での用途の拡大が期待される。本稿では日酸TANAKAの気体-気体混合および気体-液体混合技術をベースにしたウルトラファインバブル発生器の開発について紹介する。このウルトラファインバブル発生器は粒子個数濃度において, 市販品と比較して良好であることを確認した。
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NMR装置用ヘリウム再凝縮装置の開発
Development of Helium Recycling System for NMR

 産業と技術革新の基盤をつくろう 

核磁気共鳴(NMR)装置向けヘリウム再凝縮装置を開発した。本装置は液体ヘリウムの蒸発によるヘリウムガスの放散を最小限に抑え,既存のNMR装置に後付け可能な仕様となっている。装置設計にて,機械振動の抑制や液体ヘリウム槽圧力の安定化という課題を解決し,ゼロボイルオフ運転を可能としている。評価試験では,長期運転の安定性やスペクトルへのノイズの影響が十分に抑制されることを確認した。今後は消費電力削減やノイズ低減に取り組み,ヘリウム資源の有効活用や省エネに貢献することを目指す。
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連続測定式ガス濃度モニタの開発
Development of continuous measurement type gas concentration monitor

 産業と技術革新の基盤をつくろう 

半導体製造プロセスで用いられる高反応性ガスを高感度かつ高精度で濃度監視することを目的とし,真空深紫外光を活用した連続測定式ガス濃度モニタを開発した。本連続測定式ガス濃度モニタは,半導体プロセス圧力にも対応できる測定感度を有し,かつベースライン及び繰り返し測定の安定性に優れ,一定の測定精度を有している。また,適切な分光フィルタを搭載することで,多成分環境であっても目的ガスの濃度を選択的に測定できる。今後は更なる感度及び精度向上の検討や,長期安定性についても評価を進めていく予定である。
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GC-PDDによる不安定ガス成分の定量分析
Quantitative analysis of unstable gas components using GC-PDD

 

当社では産業ガスの品質保証の一環として,ガスクロマトグラフによる製品ガス中の各種ガス状不純物成分の分析を行っている。近年,品質保証に対するユーザー要求が多様化しており,その要求項目として不安定な成分の保証が求められる機会が増えている。標準ガス製造が難しい不安定成分の分析は,これまで困難であったものの,当社はGC-PDDおよびシミュレーションソフトを用い,不安定ガス成分の定量に関するGC-PDDの分析結果とイオン化エネルギーとの相関性を検証し,妥当性を見出すことでその定量分析方法を開発した。
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アミン吸着剤によるCO2回収技術の開発~水蒸気再生時の吸着特性~
Development of CO2 capture technology using amine adsorbents - Adsorption characteristics during steam regeneration -

    

CO2排出量実質ゼロを目指すには,大規模だけでなく中小規模CO2排出源から高収率でCO2を回収することも重要である。また事業として展開するには低コスト化が望まれるため,低コスト,高収率のCO2回収装置を開発すべく,広島大学と共同研究を進めている。アミン吸着剤(アミン類を多孔質担体に担持した吸着剤)を用いるとともに,吸着したCO2を低品位の安価な水蒸気にて脱離させるプロセスを適用することにより,高収率かつ低コストにてCO2を回収可能なPSAが実現可能と考えられる。本報告ではこれを達成するためのアミン吸着剤評価や装置運転条件の検討に用いる手法を紹介する。
全文を読む PDF:414KB)

関連技術報告:10ton/日規模CO2回収PSA装置 

高炉シャフト用還元ガス予熱技術
Preheating Technology of Reducing Gases for Blast Furnace Shaft

産業と技術革新の基盤をつくろう  

高炉シャフト部へ水素ガスなどの還元ガスを供給する場合,高炉シャフト部の熱補償のために還元ガスを予熱する技術が必要となるため,酸素燃焼を利用した還元ガス予熱技術の技術開発に着手した。還元ガス流量として250 Nm3/h規模の改質部を大陽日酸山梨事業所に建設し,実証テストを実施した結果,技術が成り立つことを実証できた。今後は混合部を含めた全体システムの技術開発に取り組んでいく。
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商品紹介

配管溶接ソリューション「回転管自動溶接向け制御装置 サンアーク®パイプコントローラ」
The Solution for Auto Pipe Welding “SanArc® Pipe Controller”

  産業と技術革新の基盤をつくろう

回転管自動溶接向けの制御装置「サンアークパイプコントローラ」を開発した。回転の段階ごとに蓄熱等の影響を考慮した溶接条件設定を行うことで,条件選定を容易にして管径・板厚の適用範囲を拡大でき,配管溶接の自動化と高品位化に有効である。 本商品は,当社が提供する「サンアークDS-TIGアドバンス溶接トーチ」「サンアークXZスライダー」と組合せることで,DS-TIGアドバンストーチによる開先レス・ワンパス溶接の適用対象を拡大できる。配管溶接の自動化および高効率化へ向けて,本商品と共にこれらの高速自動TIG溶接のソリューションをタンク・配管の溶接生産現場に展開していく。
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関連技術報告:プレハブ配管向け溶接倣い装置「サンアーク XZ スライダー」
関連技術報告:キーホール溶接向け「サンアーク® DS-TIG アドバンス溶接トーチ」の開発
関連サイト :DS-TIGアドバンストーチ

低温ガス発生装置「クールマイスター® AC」
Cryogenic gas generator “Cool Meister® AC”

 産業と技術革新の基盤をつくろう

最低制御温度-180℃で不活性ガスを安定的に供給できる低温ガス発生装置「クールマイスター® AC」を商品化した。近年,極低温の冷熱供給,材料試験・環境試験用途向けに極低温のガス冷媒で冷却したいという要望を受け,同装置を開発した。
商品の特徴を下記に挙げる。
 ①-60~-180℃の低温ガスを安定的に供給
 ②独自プロセス採用により温度制御精度±2℃、流量脈動を±1.5%F.S.以内
 ③シンプルでコンパクトな装置構成,短い起動時間,高いメンテナンス性及び機械式冷凍機では対応できない温度帯・供給量に対応可能
今後はデモ機を活用しつつ,更なる潜在ニーズに関して模索していく予定である。
(全文を読む PDF:255KB)

関連サイト:ニュースリリース「-180℃の極低温ガスを安定して供給可能!低温ガス発生装置「クールマイスターⓇAC」を販売開始」

ローリー分析用樹脂導管 商品名:ローリーマスター(Lorry Master)
The Gas Barrier Plastic Tube System for Analysis of Liquefied Gas in Tank Lorry “Lorry Master”

 産業と技術革新の基盤をつくろう

従来のステンレス製外径6ミリのローリー分析用導管は可撓性が悪く,その取り回しやローリーへの脱着作業は容易ではなかった。また,無理な曲げ伸ばしにより金属疲労による折損が生じていた。可撓性と対低温性の良さを持ち合わせる各種フッ素樹脂導管を入手しテストしたが,分析ガスが樹脂導管を通過中に大気成分が侵入し,実際のガス純度と分析結果が一致せず,品質要求を満足する樹脂導管は無かった。そこで,樹脂製分析導管を二重管構造にしてシール通路を付加し,分析品質を維持しながら分析導管の取り回し性とローリーへの脱着のし易さを格段に向上させ,また,ppbオーダーの高純度ガスまで分析できるローリー分析用樹脂導管を開発・商品化した。
(全文を読む PDF:326KB)

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